小鷹研究室の仕事

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あなたは今、紙を貼っています (2020 – 2021)

VIMEO
TEXT
一枚の紙を壁に貼る、ただその一回きりの行為を行う「私」の所在をめぐる、空間インスタレーション。

その紙には、紙を壁に貼る行為の瞬間を切り取った身体のイメージが描かれている。体験者はその紙を手に取り、壁面に書かれた「あなたは今、紙を貼っています」の文字の予言するところに導かれるように、そして、その紙の中のイメージを自らが反復するかのように、その紙をピタリと壁面に貼り付ける。

その行為の瞬間、体験者は文字と同化し、自らが手に取った紙の中のイメージと同化し、さらには、すでに壁面一杯に敷き詰められている無数の過去の「私」たちの行為に同化する、、そのようなかたちで「私」の固有性に揺らぎを与えようとする極めて強力な誘因の場の中に身を晒されることになる。

その行為の一瞬に生じた「私」をめぐる変質の残渣は、まるで抜け殻のように、一枚の紙として壁面上に切り出され、幾重にも積み重なった無数の抜け殻とともに、この私とも他の特定の誰かとも決定的に異なる、壁面上を住処として両側面に広がりゆく一つの流体的な身体の中に紛れ込む。まるで、一片の鱗として、それぞれの行為の残滓が相互に協力し、頼りない流体を一つの身体にまとめあげようとするかのように。

なお、NTT ICCにて開催された約2週間の展示終了後、本作で壁面に貼られた全ての紙を剥がす風景を映像的に逆再生することによって、「あなたは今、紙を貼っています」における無数の私たちの「喪失の歴史」は、圧縮的に(したがっていくぶん暴力的に)再演された。

CATEGORIES

ART

PROJECT MEMBER

宇佐美日苗 小鷹研理

YEAR

2020 - 2021

AWARD

学科賞(宇佐美日苗「紙媒体におけるメタフィクション構造の展開に関する研究・制作」に対して)[imd.nagoya]

EXHIBITION

  1. ICC キッズ・プログラム 2021 「チューンナップ じぶんをととのえる」, ICC(NTT インター・コミュニケーションズセンター), 2021.8.9-22 [EXHIBITION]
  2. 注文の多い「からだの錯覚」の研究室展 名古屋電映博2020,名古屋市青少年文化センター・アートピア, 2020.11.27-29 [EXHIBITION]
  3. 大名古屋電脳博覧会 2019, 名古屋市民ギャラリー矢田, 2019.9.19-23 [EXHIBITION]