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2020年11月27-29日に名古屋のナディアパーク で小鷹研究室の展示を行います。
以下に告知のためのページを作りましたので、基本的な情報についてはこちらをご参照ください。

展示の概要

本展は、研究室単位で行う展示会としては、「からだは戦場だよ2018Δ ボディジェクト思考法」[LINK] 以来2年ぶりとなりますが、過去の5年におよぶ「からだは戦場だよ」シリーズとは異なり、「名古屋市文化振興事業団」が主催する隔年開催の「名古屋電映博」の枠での開催となります。過去の電映博の記録をのぞいてみると、芸術系大学の学科や学部単位での開催となっていたようですが、今回は、(展示のタイトルやチラシのデザインを見ていただくとわかると思いますが)小鷹研究室単独による企画・出展となります。つまり、僕たちがこれまでやってきた通常の研究室展をもう少し公共的なところでやる、という感じで捉えてもらうといいかと思います。小鷹研にとっても、過去最大規模での展示となりそうです。まずはよろしくお願いします。

展示は現時点でもまだ二ヶ月も先のことで、普段ならまだチラシも完成していないし、このようなかたちで告知の第一報を打つ段階ですらないのですが、、今回は主催側の意向で、8月の早い段階では展示のチラシを入稿する必要がありました。 小鷹研究室の場合、展示の三ヶ月も前となると、時期的に、新作はまだ完全にアイデア段階にとどまるもので、展示の具体的な方向性はまだ何も見えていないというのが通常です。しかし幸運にも、今年の場合、夏休み前のかなり早い段階で、今後の小鷹研究室の方向性を決定づけるような全く新しいプラットフォームを見出し、新しい錯覚現象と戯れる日々を送っていたところでした。展示のチラシの中でメインに据えられた手とボールペンのイラストは、このプラットフォーム上で生まれた新作(というより新作群)のコンセプトと非常に深く関わるものとなります。この装置による体験に加え、3点から4点ほど予定している新作の内容は、今後、展示日が近づいていくところの適当なタイミングで、少しずつ共有していこうと思いってます。また、新作だけでなく、小鷹研のこれまでの代表作についても展示を行います。現段階で「Elastic Legs Illusion」、「蟹の錯覚」、「動くラマチャンドランミラーボックス」、「ボディジェクト指向」、「影に引き寄せられる手」の出展を決めています。お楽しみに。

ゲストレクチャー

(前回の戦場Δに引き続き)今回も関連イベントとしてゲストトークと錯覚レクチャーを開催します。ゲストトークでは、メディアアートの分野からの高名な刺客として、アーティストの谷口暁彦さんとインタフェース研究者の水野勝仁さんをお迎えして、作品体験における「気持ちいい」「気持ちわるい」の二項問題を軸としたディスカッションを行う予定です。

僕は、2005年から2年間、大垣の大学院(IAMAS)でメディア・アート分野の制作に勤しんでいたのですが、実は、この時期にもてはやされていた(インタラクティブ・アートと呼ばれるような)作品群のほとんどに対して、個人的にあまり強い関心を持つことができませんでした。IAMAS卒業後、7〜8年ほど、僕とメディアアートとの接点は完全に途切れたままだったのですが、現在の教職という立場で、不意にとびこんできた、当時のメディアアートのシーンのいくつかの作品の映像を目にしたとき、僕は、10年前とは明らかに違う感触をそこに見出し、メディアアートに対する関心を再び取り戻すこととなりました。ものすごくざっくりとした印象で言えば、2000年代は「気持ちわるい」をノイズとして処理し、(物理世界とメディア世界のシームレスネスに関わる)「気持ちいい」を最適化しようとする作品ばかりがもてはやされていた一方で、2010年以降では、「気持ちいい」と「気持ちわるい」の相互のダイナミクスこそが主題化された印象です(もちろん、これは芸術領域の公式見解ではないのだと思いますが)。そして、谷口さんと水野さんは、ここで僕が見出すこととなったメディアアートにおける新たな風に、アーティストと批評の両極の立場から、最前線の現場に立って、強力な推進力を与えていた二人の当事者なのです。

谷口さんは(僕が紹介するまでもなく)2010年以降のメディアアートを代表する作家であり、僕自身もこれまで谷口さんの作品体験について何回か言及してきました。

上記の3つの作品体験において、個人的に重要だと感じているのは、ある種の「切断」の感覚です。この「切断」は、まわりくどく表現するならば、鑑賞者が一人称的に没入しているある特定の時空間からの”剥がれ”(による自己の一時的喪失)とでもいうべきもので、ここには明らかに「気持ちわるさ」の予兆が感じ取れます。一方、水野さんは、研究者の立場から、メディアアートのうち、とりわけ「ポストインターネット」に分類される領域の作品に関して、様々な媒体を通して精力的に論考を発表しています。水野さんの文章は、水野さん自身の作品体験における一人称的な「咀嚼しきれなさ」に関わる体感が起点となっている印象があります。実は、僕がここ数年で感銘をうけた「気持ちわるい」体感を含むメディアアート作品のほとんどは、それ以前に、水野さんのセンサーによって見出されているという事情もあり、その意味で、僕は水野さんの「気持ちわるさ」に対するアンテナに強い信頼を持っています。当然というべきか、水野さんは、谷口さんの作品についてこれまで何度も取り上げていますし、実は、近年の小鷹研究室の活動にも継続的に関心を持っていただいています。

  • 水野勝仁 「谷口暁彦「思い過ごすものたち《A.》」と「滲み出る板《D》」 iPadがつくる板状の薄っぺらい空間の幅 」(連載第5回:モノとディスプレイとの重なり)[MASSAGE]
  • 水野勝仁 「影のマスキングがバクルとサーフェイスとを引き剥がす」(連載第4回:サーフェイスから透かし見る)[MASSAGE]

と、今回は幸運にも、このような「気持ちわるい」にゆかりのあるスペシャルなお二方をゲストとしてお迎えすることができました。ゲストトークでは、「気持ちわるい」を補助線として、メディアアートと「からだの錯覚」のそれぞれが志向しているものが、相互に接続したり、交差したり、反発したり、ねじれたり、、といったところの議論ができたら面白いな、なんてことを考えています。なお、コロナ対策の意味もあり、ソーシャルディスタンスを十分に確保した、25名程度の定員(有料1500円)を予定しています。申込方法は11月上旬に当HP[LINK]で案内します。多くの方のご参加をお待ちしています。

錯覚レクチャー

錯覚レクチャーは、小鷹と佐藤優太郎(博士後期課程在中)の二人で行います。 佐藤くんは大学4年時に小鷹研究室で「蟹の錯覚」[WORKS]を制作し、その後IAMASで修士課程を取得し、今年の10月から再び小鷹研究室に戻り、実験心理の研究をすすめている学生です。

レクチャーは、主に小鷹研究室で考案された23の錯覚を順に体験してもらう、ワークショップのようなかたちをとります。 今回は気合が入っていて、卒業生の宇佐美日苗(DTPまわり)と、もこうぼう(イラスト)に協力を依頼し、将来的な書籍化を見据えて、23の錯覚の全貌(主観客観ドローイング + 感じる感じないマップ)を収めたブックレットを作成予定です。このブックレット、錯覚レクチャーの参加者には無料で配布します(レクチャーの参加には1000円いただきます)。現在、まさに制作の途上なのですが、むちゃくちゃ面白いものができそうです。錯覚レクチャーのもう少し詳しい内容については、11月上旬までにWEBと連動するかたちで、告知をしたいと思っています。

おわりに

ひとまず、展示の第一報としてはこんな感じです。11月上旬を目標に第二報を放ち、そのなかで、スペシャルプログラムの申し込み方法や、新しい展示物の内容などを案内できると思います。よろしくお願いします。

(こだか)

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